外国語多読とか(英語、ベトナム語、ハンガリー語?)

外国語の多読とankiのデッキシェアをしていきます

2023年12月多読記録(英語)

2023年12月は4冊読みました。合計60,794文字です。

オススメ度は5点満点で表記します。

 

1. Agatha Christie "Murder on the Orient Express"

レーベル : Penguin Readers

レベル  :4

邦訳   :長沼弘毅訳『オリエント急行の殺人』創元推理文庫

原著   : Kindleで安く買える

オススメ度:★★

 

先に映画の『オリエント急行殺人事件』(2017)を見たので内容理解は容易だった。犯人は分かっているものの、人間が多すぎて謎解きには集中できず。殺人が起こって淡々と推理が繰り広げられるので、殺人の動機が後半に種明かしされるまでがかなり退屈。終わり方が粋だった映画の演出と比べて、原作はかなりあっさりしている。それをレベル4のリトールド版で読むと、より一層「もう終わり?」感は否めない。初めてなので邦訳は読んだが、原文は読まないかなあ。

 

好きな表現

It will help to pass the time.(暇つぶしになるでしょう)

せっかくの休暇でオリエント急行に乗ったのに、殺人事件が起こってしまい、頼まれて引き受ける場面

 

2. Oscar Wilde "The Picture of Dorian Gray"

レーベル : Pearson English Readers

レベル  :4

邦訳   :福田恆存訳『ドリアン・グレイの肖像』新潮文庫

原著   : Kindleで安く買える

オススメ度:★★★★

 

美貌の青年モデル・ドリアンが、その画家の友人でもある逆張り毒舌貴族に唆されながら悪行を積んんでいく。ドリアンがどれだけ悪いことをしても人相に現れることはなく、ただ彼が描かれた絵だけが醜悪になる。新潮文庫の裏表紙から引用すると、”快楽主義を実践し、堕落と悪行の末に破滅する美青年とその画像との二重生活が奏でる耽美と異端の一大交響楽”である。ドリアンの行動原理は単純ながら、スキャンダラスな展開も多く、スイスイ読めた。快楽主義者ヘンリー卿(逆張り毒舌貴族)の発言は、すべてがパンチライン風でTwitterのようにも読める。これが翻訳版では福田恆存の言語センスが乗っかるので噛み応えあり。

 

原作が読みたくなる美文調ではあったが、骨太な英文のため断念した。アスク社から『オスカー・ワイルドで学ぶ英文法』が出ているのも合点が行く。

1945年製作の映画もアマプラで見た。不必要で真意を測りかねる改変があってモヤっとしたがロンドンのサロンと歓楽街の雰囲気を味わうだけで十分かな。

 

好きな表現

Anything becomes a pleasure if you do it too often. (たくさんやれば何事も快楽になる)

原文ではyouがoneだったような記憶。汎用性も高そうで、銭湯デビューに足踏みしているインド人の知人に使ってみます。

 

3. Patricia Highsmith "Strangers on a Train"

レーベル : Penguin Readers

レベル  :4

邦訳   :青田勝訳『見知らぬ乗客』角川文庫

原著   : Kindleで安く買える

オススメ度:★★★

 

1951年にヒッチコックによって映画化されており、アマプラで視聴可能。

小説を先に読んでいると、映画の序盤は「ここを改変して意味あるのか?」と出来を疑ってしまうが、全て終盤の盛り上がりにかけてのフリになっている。こちらはオススメ。

多読教材のレベル4の語彙と文法では心情の機微を描き切るのに限界があるというか、極端な二項対立や、動機が幼稚なサイコ野郎が採用されやすい気がする。その意味では先の"The picture of Dorian Gray"も、そうした行動原理が描写の軸となっており、圧倒されるような異国趣味とデカダンスの羅列などはカットされていた。この記事を書いている1月時点ではスティーブンソン『ジキルとハイド』を読んでおり、この作品もこの原則に当てはまると言える。多読教材ゆえの物足りなさはあるものの、読み進めながら現在地を確認できて読解力も確認できるので★3つ。

 

本題は交換殺人で、話の筋は追いやすい。簡単に人が殺されるので、ありがちな冗長さとは無縁だ。一方、邦訳では描写のまどろっこしさを確認でき、オスカー・ワイルドのような特筆すべき文章表現も見受けられなかったため、原文通読はパスする予定。

 

4. Richard Curtis "Love Actually"

レーベル : Penguin Readers

レベル  :4

邦訳   :石川順子訳『ラブ・アクチュアリー竹書房文庫

原作   : 映画が原作で本作はノベライズ版のリトールド

オススメ度:★★

 

がっつり下ネタとセックスシーンがあるのに、なぜか学習教材になりがちなリチャード・カーチスの映画『ラブ・アクチュアリー』が原作。そのノベライズ版を更にリトールドしたもので、会話文が中心で話が進む。がっつり下ネタをブチ込むイギリス人男の話は丸々カットされてた。つまり、以下のセリフはリトールドされていない。

”You think this backpack is full of clothes? Like hell, it's chock-a-block full of condoms”(荷物の中身は服だとでも?コンドームがぎっしりさ)

”Yeh, back broken from too much sex”(セックスのしすぎで腰がボロボロになっているよ)

”You know perfectly well that any bar anywhere in America contains ten girls more beautiful and more likely to have sex with me than the whole of the United Kingdom”(よくわかっているだろう、アメリカのどこのバーでも、イギリス中のどんな女よりも綺麗で、俺とセックスしそうな女が10人はいるんだぜ)

(出典:『DHC完全字幕シリーズ ラブ・アクチュアリー』)

 

映画を先に知っているからスイスイと読めたが、こちらの理解力もあるもの、文字にすると滑稽さが伝わってこない。原作を先に読むことありきで多読を進めるのは真に読解とは言えないかもと。ともあれ、ラブ・アクチュアリーは映画の方が面白い。カットされた下ネタパートとローワン・アトキンソン演じるデパートの店員シーンが面白い。

 

多読とは別に読んでいる洋書

Simon Reynolds "Generation Ecstacy"

次回のZINEは音楽のことを多めに書くつもりなので、同書を読んでいます。途中までですが、テクノを論じるにあたり、70年代のクラフトワークから80年代のイタロディスコ、シカゴハウス、デトロイトテクノハードコアテクノから90年代のレイブまでを追うような概観。私はディスコ以外は熱心なリスナーではないので、固有名詞をしっかり拾うところから進めています。ネイティブ向けの書籍で、研究書ではないけれど、研究に近しいことをしている。語彙はなんとか食らいついていますが、私の脳内コーパスを外れる鮮やかな表現が小気味よくもあり、良い負荷にもなっています。多読も最終的には一般書でできればなと。